震災時の性暴力 予防・対応・情報


震災時の混乱の中で、性暴力が起きることがあります。阪神淡路大震災や東日本大震災でも、性暴力が起こりました。

また、震災後には、長い避難所生活の中で、ドメスティック・バイオレンスが起きることもあります。

このような性暴力を防止する方法、そして万が一性暴力が起きたときの対応をまとめました。

 

<性暴力を防止する>

過去の震災では、性犯罪の前科のある人やボランティアとして被災地に訪れた人などからの性暴力、震災以前から暴力を振るう傾向にあった人によるドメスティック・バイオレンス、震災後のストレスから暴力を振るうようになるケースが見られます。このような暴力を防止する方法には、以下のようなものがあります。

 

◎避難所でできること

・避難所に誰がいて、誰が新しく入ったのか、あるいは誰がボランティアスタッフなのかを明確にする。簡易のリストバンドを作り避難所生活者につけてもらったり、名簿を定期的に作成・更新したりする。

・暗闇、人が少ない場所、駐車場、倒壊した家屋へ行く際には、二人以上で行く。また、そのような場所に行く前に誰かにその旨を伝えておく。

・性暴力をはじめとする悩みに対応できるような相談場所を避難所内に一つ設けておく。できればそこに医療関係者またはカウンセラーを配置する。トイレや炊き出しといった目につく場所に相談室の情報を掲示する。

・避難所内に交流部屋を設けられる場合は、男性のみ、女性のみ、高校生のみ、といった様々なグループが交代で使えるようにし、同世代や同性だからこそ相談しやすいことを話せる場を作る。

・市町村や学校ごとの少人数グループを作り、グループのリーダーを男女それぞれ決め、グループ内の課題を把握できるようにする。

 

◎被災地外でできること

・被災地にアルコール飲料を送らない。

・防犯ブザーや懐中電灯を被災地に送る。

・性暴力被害専門の看護師や警察官を派遣する。

 

<性暴力に遭ったら>

・警察に届け出ると、必要な証拠採取や検診、病院の紹介、費用の負担などを支援してくれるため、届けられる場合は届け出る。近くの警察官、110番、または全国の「性犯罪被害相談電話」(一覧はこちら)に相談する。

・妊娠の心配がある場合は、緊急避妊薬/アフターピルを72時間以内に服用する。警察、または助産師・産婦人科医が近くにいないか探したり、アフターピルを処方している病院に問い合わせたりする(熊本県でアフターピルを処方できる病院はこちら)。

・性感染症については、被害直後に検診できないものもあるため、震災が落ち着いてから保健所や婦人科で検診する(全国の保健所検索はこちら)。

・身体の治療。可能であれば病院で治療する。それが難しい場合は、消毒や止血などの応急処置を避難所で行う。

・精神的ケア。避難所内にカウンセラーがいる場合は相談する。電話ができる場合は、全国のホットラインなどに相談する(全国のレイプ・クライシス・センター一覧はこちら)。

 

◎児童性虐待や障害者への性暴力

子どもや障害者が性暴力被害に遭った場合は、そのことを言葉で伝えられないことがあります。

例えば、大人を異常に怖がる、特定の人を怖がる、腹痛を訴える、腹部や陰部を頻繁に触る、不自然な外傷がある、無表情が続く、夜うなされている、悪夢を見るといった様子が見られる場合は、不安なことや怖いことが無いかを尋ねたり、子どもから目を離さないようにしたりする必要があるかもしれません。

 

<知っておいてほしいこと:「思い込み」は人を傷つける>

「性暴力など日本では起こらないし、田舎には無縁の話」

日本でも、1~2割の女性が性暴力被害に遭っていることがわかっており、暗数を考えると、それ以上の被害があることも考えられます。男性も被害に遭うことがあります。また、被害のうち6~7割は被害者の身近な人や知り合いからの被害です。比較的安全だと言われている日本でも性暴力は起こっています。

 

「震災に遭ってみんなが大変なときに、性暴力を訴えるなど申し訳ない」「性暴力など考えている場合ではない」

性暴力は犯罪です。性暴力を訴え、必要な支援や助けを求める権利はどんなときにもあります。「あの人は頑張っているのに……」「こんなに大変な時なのに……」と、誰かと比べたり被害の重さを比べたりせず、つらいときには助けを求めてください。

また、性暴力は「性的なこと」だと考えられやすく、その暴力性が想像されにくいですが、傷害を伴い、時には死に至るような身体暴力を伴うこともあります。性暴力を原因とするPTSD発症率は、戦争や震災を経験したときのPTSD発症率と同程度と言われており、その衝撃や影響は軽んじられるべきものではありません。

 

「こんな年齢で被害に遭ったなんて、恥ずかしくて言えない」

性暴力は、男女問わず、年齢問わず起こりえます。性暴力は被害者が誘発したものでも被害者の落ち度でもありません。性暴力の責任は全て加害者にあります。被害者が「恥ずかしい」と思う必要はありません。

 

<最後に>

被災地の性暴力についてまとめましたが、被災地以外に住んでいても、震災という衝撃の強いニュースを見続けることで、過去の性暴力を思い出したり、漠然とした不安感や恐怖心を抱えたりすることがあります。そのような場合は、テレビやパソコンなどの情報源を消し、衝撃の強い映像や情報から少し距離を置いてみてください。深呼吸して、自分が安全な場所にいることを確かめてみてください。

 

<参考資料>

・「子どもへの性的虐待・家庭内性暴力の初期対応手引き 小学校・中学校・高等学校・特別支援学校教職員 および放課後児童クラブのために」 こちら

・東日本大震災女性支援ネットワーク研修チーム「こんな支援が欲しかった!~現場に学ぶ、女性と多様なニーズに配慮した災害支援事例集」 こちら

・東日本大震災女性支援ネットワーク 調査チーム報告書 Ⅱ 「東日本大震災 災害・復興時における女性と子どもへの暴力に関する調査報告書」 こちら

・東日本大震災女性支援ネットワーク 「政策提言2  DVや性暴力被害への対策の強化(案)」 こちら

・内閣府男女共同参画局 「東日本大震災被災地における女性の悩み・暴力相談事業 報告書」 こちら

・「災害と女性」情報ネットワーク こちら 

・ルイジアナ州反性暴力財団/NSVRC(全米性暴力情報センター)出版 監訳・発行 NPO法人女性と子ども支援センター ウィメンズネット・こうべ 「災害時に起きる性的暴力 予防と対応のためのマニュアル」 こちら

 

(ライター:Asako)

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